フェチ、フェティッシュの語源は?

BDSMの歴史

SMの世界で良く使われている特殊性癖などを指す言葉としてフェチやフェティッシュという言葉が使われたりしますが、どういった由来なのでしょうか。
今日はフェチズムに関して少し掘り下げてみようと思います。

元々はポルトガル語

「フェチ」「フェティッシュ」の語源は、ポルトガル語の「feitiço(フェイティソ)」にあります。この言葉は「魔術」「呪符」「護符」などを意味し、さらに遡るとラテン語の「facticius(ファクティキウス/人工的な、作られた)」に由来します。

15世紀後半、アフリカを訪れたヨーロッパ人(特にポルトガル人)が、現地住民が歯や木片、貝殻などを神聖視し崇拝していたことを、自国で聖遺物や護符を「feitiço」と呼んでいた文化と重ね合わせ、これらの崇拝物も同じく「feitiço」と呼ぶようになりました。この言葉がフランス語の「fétiche(フェティッシュ)」となり、さらに英語の「fetish」となって西欧に広まりました。

フェティッシュの本来の意味

もともと「フェティッシュ」「フェティシズム」は宗教や人類学の領域で「物神崇拝」「呪物崇拝」を指す用語でしたが、19世紀以降は精神分析や性科学の分野で「特定の物や身体の一部への異常な愛着や性的嗜好」という意味でも使われるようになりました。日本語の「フェチ」はこの「フェティシズム」の略語です。

そして18世紀にフランスで提唱されたフェティシズムの概念は、「物神崇拝」や「呪物崇拝」を指していました。これは、シャルル・ド・ブロスがアフリカの宗教文化を観察し、現地の人々が歯や木片、貝殻などの物体を神聖視し崇拝していた現象を説明するために用いたものです。

このときの「フェティシズム」は、特定の物体やその断片が宗教的・超自然的な力を持つと信じられ、集団的に崇拝の対象となる現象を意味していました。つまり、宗教学や人類学の領域における「物そのものへの信仰」や「物が神格化されること」が18世紀当時のフェティシズムの中心的な意味でした。

その後、19世紀以降になると、フェティシズムは精神分析や性科学の分野で「特定の物や身体の一部への異常な愛着や性的嗜好」という意味でも使われるようになりましたが、18世紀段階ではあくまで宗教的・文化的な物神崇拝を指していました。

ではフェチが性的嗜好を指すようになった背景は?

「フェチ」や「フェティッシュ」が性的嗜好を指すようになった背景には、19世紀後半の精神医学・心理学の発展が大きく関与しています。

もともと「フェティシズム」は宗教的な「物神崇拝」や「呪物崇拝」を意味していましたが、1886年にドイツの精神科医リヒャルト・フォン・クラフト=エビングが著書『性的精神病理』で、特定の物や身体の一部が通常よりも強く性的興奮を引き起こす現象を「フェティシズム」と定義し、性的嗜好の用語として初めて用いました。

その後、フロイトなどの精神分析学者が、フェティシズムを「性的対象が身体の一部や物品に向けられる心理的傾向」として理論化し、性的嗜好の一形態として広く認識されるようになりました。
この背景には、幼少期の経験や無意識的な心理的要因が特定の対象と性的興奮を結びつけるという精神分析の考え方が影響しています。

フェチという言葉がライトな意味合いで広く使われる理由

「フェチ」という言葉がライトな意味合いで広まった理由は、以下のような社会的・文化的背景が挙げられます。

本来の「フェティシズム」は精神医学や心理学で「性的倒錯」や「異常性欲」といった重いニュアンスを持っていましたが、日本語の「フェチ」は略語・俗語化する過程で、その意味が大きく変化しました。

日本では「脚フェチ」「手フェチ」「声フェチ」など、日常的な会話やメディアで「○○フェチ」と気軽に使われるようになり、必ずしも強い性的執着や偏執的傾向を指すのではなく、「ちょっと好き」「魅力を感じる」といった軽いニュアンスで広まった。
インターネットやSNS、雑誌、テレビなどで「フェチ」という言葉が頻繁に使われるようになったことで、誰もが自分の好みをカジュアルに表現できる言葉として定着したことも、ライトな意味合いの拡大に寄与しています。

その結果、現代では「フェチ」は性的嗜好だけでなく、「趣味」「こだわり」「好きなポイント」といった意味でも使われるようになり、日常語としての敷居が下がったため、多くの人が自覚的・気軽に使うようになりました。

フェチという言葉が日常会話で使われるようになったきっかけ

「フェチ」という言葉が日常会話で使われるようになったきっかけは、もともと精神医学や宗教学の専門用語だった「フェティシズム(fetishism)」が、日本で略語・俗語化し、「脚フェチ」「手フェチ」など具体的な好みを表現するカジュアルな言葉として広まったことが大きな要因です。

1990年代以降、雑誌やテレビ、インターネットなどのメディアで「○○フェチ」という表現が頻繁に登場し、誰もが自分の好みを気軽に表現できる言葉として定着しました。
「フェチ」は本来の「異常な執着」という重いニュアンスから離れ、「ちょっと好き」「なんとなく惹かれる」といった軽い意味合いで使われるようになり、日常語として浸透しました。

SNSやネット掲示板の普及も、個人の趣味や好みをオープンに語る文化を後押しし、「フェチ」という言葉のカジュアル化・一般化に拍車をかけました。