伝説のフランスSM小説の金字塔:『The Story of O』について
BDSM、服従と支配、フェティッシュな美学、エロティシズムをテーマにしたフランスの伝説的な小説を今回はご紹介します。

原題:Histoire d’O
著者:ポリーヌ・レアージュ(Pauline Réage)というペンネーム(実際はドミニク・オーリー)
発表:1954年、フランス
ジャンル:エロティック文学、BDSM
物語の主人公「O」は、恋人の願望に従い、自らを性的な服従と支配の世界へと投じていきます。
物語の中では、彼女が様々な訓練や儀式、束縛・調教を通して「理想の従順な女性」となっていく様子が描かれます。
この作品の主なテーマは
服従と支配(Dominance & Submission)
アイデンティティの喪失と再獲得
エロティシズムと感情の境界線
身体性と精神の解放または抑圧
官能と芸術の融合
となっており、発表された1950年代の当時としては非常に過激で挑発的な内容で、女性作家がこのような内容を描いたことが、当時の文壇では大きな衝撃でした。
文学的にも評価が高く、単なるポルノとは異なる深みがあり、後の映画、ファッション、アート、ポップカルチャーにも多大な影響を与えた一冊となっています。
伝説のフランスSM小説:『The Story of O』が執筆された背景
『The Story of O(O嬢の物語)』が描かれた背景には、1950年代フランスの社会状況や、作者ドミニク・オーリー(本名:アンヌ・デスローズ)の個人的な事情、そして文学的挑発という意図が複雑に絡んでいます。
第二次世界大戦後のフランスは、保守的な価値観とカトリック的な倫理観が根強く、性についての表現は非常に抑圧されていました。
一方で、文学や芸術の世界では、実験的・反体制的な表現が台頭しており、性やタブーをテーマにした作品も徐々に登場していました。
そして同時代には、実存主義やフェミニズム、自由恋愛の議論が盛んでボーヴォワールの『第二の性』なども、女性の主体性と性を巡る議論に影響を与えていました。
『The Story of O』は女性作家によって執筆された
作者ポリーヌ・レアージュ(Pauline Réage)はペンネームで、実際はガリマール出版社の編集者・翻訳家として働く女性でフランス文壇の中心にいて、知的で文化的素養も深かった人物だったとされています。
ポーリンは当時、恋人ジャン・ポーラン(作家・ナチス抵抗運動の英雄)に、自分の情熱を示すためにこの過激な物語を書いたとされています。
彼はサディズム的嗜好を持っており、彼を喜ばせるためにあえて極端な“服従”の物語を創作したのです。
つまり、『O嬢の物語』は、実は「恋する女性が、自分のすべてを捧げようとした、究極の私的文学」でもあったのです。
1954年、パリの小さな出版社から匿名で出版され、衝撃的な内容ゆえに即座にスキャンダルになり、一部では「ポルノ」と批判されつつも、同時に文学的完成度が評価され、文学界でも話題にもなりました。
フランス政府は猥褻文書として訴追を検討したが、文学界からの擁護により却下されています。
『The Story of O』が後に与えた影響は凄まじく大きい
『The Story of O(O嬢の物語)』が後のSM文化、フェティッシュファッション、フェミニズム、芸術映画などに巨大な影響を与えたのは間違いのない事実です。嬢の物語)』が後のSM文化、フェティッシュファッション、フェミニズム、芸術映画などに巨大な影響を与えたのは紛れもない事実です。
面白いのはOは物語の中で単なる「性の奴隷」ではなく、自分の意志で服従を選ぶ存在として描かれており、これは「女性の従属ではなく、自己選択的な献身」として、パラドキシカルな女性像を提示しているのではないかと考察されます。
今の完成から考えてもとても先鋭的な思想がこの物語には込められていたのではないでしょうか。
『The Story of O(O嬢の物語)』は、日本語訳が正式に出版されています。
- 邦題:『O嬢の物語』
- 訳者:澁澤龍彦(しぶさわ たつひこ)
- 出版社:河出書房新社(初版は1968年)
- その他:河出文庫や角川文庫などからも再刊されています

澁澤龍彦は、日本における耽美・幻想文学、エロティシズムの第一人者であり、彼の手による翻訳は非常に文学的かつ美的です。
彼の翻訳は単なる直訳にとどまらず、『O嬢の物語』の持つ詩的で儀式的な世界観を、美しい日本語で表現しています。そのため、原作の持つ官能性と哲学性の両面を堪能することができます。
また「The Story of O」は映画化もされているので興味ある方は一度ご覧になられてはいかがでしょうか。